第三回 世界最高レベルのアニマルシェルター 先日、熊本市の動物愛護センターが、独自の取り組みによって殺処分される犬の数を10年間で10分の1にまで減らしたという、すてきなニュースがありました。
世界のペット事情:サンフランシスコ
第三回 世界最高レベルのアニマルシェルター
先日、熊本市の動物愛護センターが、独自の取り組みによって殺処分される犬の数を10年間で10分の1にまで減らしたという、すてきなニュースがありました。このセンターに各地の自治体から派遣や視察が相次いでいるとか。日本の動物福祉は、まさにいよいよ動き出したという段階なのかもしれません。
では海外…たとえばアメリカはどれほど進んでいるのかというと、じつは殺処分数では日本の比ではなく、毎年3~4百万単位の犬猫が殺されているとも。悪名高いパピー・ミル(工場のような繁殖場)も少なくないようです。けれど、一方ではすばらしい活動や施設もたくさん。その代表として今回ご紹介するのが、サンフランシスコの「マディ・センター」と名付けられた、世界最高レベルのアニマル・シェルター=動物保護施設です。
サンフランシスコで迷子になったり捨てられたりした動物がまず連れてゆかれるのがACC=アニマル・コントロール・センター、つまり市の動物管理局。これは日本でいうと自治体が運営する動物愛護センターにあたります。熊本では、ここで働く人々が殺処分を減らそうと立ち上がったわけですが、サンフランシスコでは、そのかたわらに巨大なシェルター、マディ・センターがあるのです。
マディ・センターは正式には、SFSPCA(サンフランシスコ動物虐待防止協会)のシェルターです。RSPCA(王立動物虐待防止協会)という世界に名高い英国の動物福祉団体のことを聞いたことがある人もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカも各地にSPCA(動物虐待防止協会)があります。
飼い主のいない犬や猫は、新しい家族が見つかるまでここで暮らすことになるのですが…。7億円の建設費を投じて建てられたここのシェルターは、まさに動物福祉の殿堂と呼びたくなるような、さまざまな工夫と配慮、知恵がこめられています。
まず、建物内全体が広々として落ち着いた雰囲気で、ちょっとしたホテルのよう。動物たちが暮らすエリアも同様で、廊下には、それぞれ「ラッシー・レーン」や「レミントン・ロード」といった名前まで付いています。そして、この廊下に沿って並ぶのが、保護された犬や猫の「居室」です。
各室内はというと、日本のワンルームマンションくらいはあろうかという広くて清潔なスペースに、ソファやカウチ、観葉植物が配され、壁には絵画、天井にはおしゃれな電灯や天窓、床にはラグ、そしてテレビまで! 住んでいるのは、もちろん犬や猫のみ。なかよし同士は同室になりますが、シングルユース(!)も多数。各部屋はプレイルームにつながっていて、他の仲間と遊ぶこともできます。

もっとお金をかけるべきところがあるのではと疑問に思うほど贅沢に思える環境ですが、じつはこれ、犬や猫たちが新しい家族に出会えたあかつきには、少しでもスムーズに新しい環境になじめるようにとの工夫なのです。
各部屋にはピクチャー・ウィンドウが設けられ、里親候補者はそこから居住犬・猫を見るだけでなく、部屋のドアの脇に空けられた小さな穴、「スニッフ・ウィンドゥ(フンフン窓とでも呼べばよいでしょうか)」から自分の手を室内の犬や猫にかがせることもできるようになっています。
もちろん、心身のケアや再出発のためのトレーニング、里親候補へのアピールと情報公開など、動物たちがセカンドチャンスをつかむためのプログラムも、施設以上に充実していることはいうまでもありません。
ちなみに「マディ・センター」という名前は、マディという名のミニチュア・シュナウツァーに由来しています。あるIT企業のCEOが愛犬マディへの感謝のしるしとして、このシェルター建設のため多大な寄付をしたのだとか。税制の違いもありますが、日本のお金持ちにもこんな人が現れるとすてきですね。
また、2008年だけでも、ここで受け入れた4,500頭あまりの犬猫のうち4,200頭以上が里親を見つけたとのことです。※ノーキル(殺さない)シェルターなので殺処分はありません。
「マディ・センター」はSFSPCA(サンフランシスコ動物虐待防止協会)のシェルター。アニマル・シェルター=動物保護施設としては。世界最高レベル。
文:山喜多佐知子 ・ 撮影:武井哲史











