第五回 犬は路上でも大切な家族 『ビッグイッシュー日本版』という雑誌を目にしたことはありませんか? 路上生活を余儀なくされたホームレスの人々が販売員となり、自立を目指すという雑誌。
世界のペット事情
第五回 犬は路上でも大切な家族
『ビッグイッシュー日本版』という雑誌を目にしたことはありませんか? 路上生活を余儀なくされたホームレスの人々が販売員となり、自立を目指すという雑誌。ビッグな有名人が表紙と巻頭インタビューを飾り(2010年の1月15日号はなんとスティング!)、その他の内容もなかなかにおもしろいものなのですが、今回はそんな『ビッグイッシュー』の生まれ故郷としての英国のお話。スコットランドやイングランドでは、もうずいぶん前から大きな駅のまわりやショッピング街で、街のざわめきの中に「Big Issue!!」という呼び声が聞こえるのが当たり前のようになっています。ちなみに私が最初に『ビッグイッシュー』の存在を知ったのも15年ほど前のエディンバラでした。
『ビッグイッシュー』のみならず、英国ではいろいろな形でのホームレスの人々への支援活動が行われてきましたが、何よりPetomoとして気になるのは犬たちのこと。そう、ホームレスの人々と犬たちの関係です。

じつは、英国の路上生活者には、犬を連れている人も珍しくありません。それも大型犬が少なくない。かつてロンドンで出会ったある青年は、美しいローデシアン・リッジバック(ローデシアは白人支配時代の名称のため現在では一般にリッジバックと呼ばれています)という、アフリカ原産の犬とともに、サウス・ケンジントン駅近くの路上に座っていました。
犬の名はバンディット(盗賊)。その名前とは裏腹に、じつに穏やかで、主人である青年にぴたりと大きな身体を寄せ、守りあうように伏せています。バンディットもまたホームレスドッグだったそうで、青年いわく、バンディットは彼の大切な家族だと。路上での生活において、犬、それも大型犬の存在は、身を寄せあうことで寒さをしのげるというだけでなく、襲撃者から身を守るためにも有効だと知られていますが、それ以上に心の支えにもなっていることは、青年とバンディットを見るまでもなく、想像に難くありません。そして、そのことー犬と人との絆ーを尊重する人たちもいるのです。
当時、バンディットはお腹に腫瘍があったそうなのですが、手術をして快復したというのです。どこからお金を工面したのだろう?
と不思議そうな顔をする私に、青年は「サポートしてくれるところがあるんだよ」と。そう、ロンドンには路上生活者の犬たちに食料や医療を無償提供する団体があるのです。
犬は大切な家族。屋根の下でも路上でも。動物に関わる人たちの間だけでなく、社会全体がそう確信しているということなのかもしれませんね。
路上で暮らす青年と犬。そしてそんな彼らを見守り、時にサポートする社会。イギリスだけでなく日本にもそんな温かい心が根づくといいですね。
文:山喜多佐知子 ・ 撮影:武井哲史










